会社員から独立した人がつまずく“確定申告”の落とし穴── 独立1年目は年末調整が必要? それとも確定申告だけでOK?

こんにちは、後藤会計事務所の後藤です。
このブログでは、独立したての個人事業主の方からよくいただく疑問を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

独立1年目の方から特に多い質問が、
「年末調整って必要なんですか?」「会社にいた期間だけ年末調整してもらえるんですか?」「確定申告ではどうしたらいいんですか?」
というものです。

独立を夢見て個人事業主になったものの、ふと年末付近になると確定申告しなきゃいけない現実が・・・。
そうすると色々な疑問がわいてきますよね。

実際に、独立1年目の人ほど間違いが起きやすいポイントがいくつかあります。

それは、会社員と個人事業主が混在するのは独立1年目が一番多いからなのですが、
これを自分で理解して、事業の仕訳も自分で起こして、確定申告まで行うとなるとなかなか高いハードルです。

この記事では、後藤会計事務所に寄せられる“勘違いしやすいポイント”を整理して解説します。


【結論(ポイント)】

会社員から独立した人の年末調整と確定申告のポイントは以下の通りです。

  1. 年の途中で退職した → 原則、年末調整はない(例外あり)
  2. 退職時に源泉徴収票をもらうことが最重要
  3. 独立して収入がある場合は、確定申告で給与+事業所得を合算する
  4. 配偶者控除・扶養控除・生命保険控除などは確定申告でまとめて精算

結論として、独立1年目のほとんどの方は
「年末調整なし → 確定申告で全部まとめて精算」
という流れになります。


【誤解と注意点】

× ① 「退職したけど、会社が年末調整してくれるはず」

退職した月で給与支給が終われば、年末調整はしません。

年末調整は、原則として年末(12/31)に会社に在籍している人だけが対象です。
途中退職者は確定申告で精算することになります。

ただ、いくつか例外はあります。

その中で一番多いパターンは、12月の給与がすでに支給された後に退職した場合かなと思います。この場合、年間の給与額が確定しているため年末調整の対象となります。

そのほか、・海外支店等に転勤したことなどの理由により非居住者となった人、・著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除きます。)などの例外があります。
参考:タックスアンサーNo.2665 年末調整の対象となる人(国税庁HP)

まとめると、年の途中で退職した場合、基本的には「年末調整をしてもらえない」ということを覚えておきましょう。


× ② 「源泉徴収票は後で取り寄せればいい」

年明けに紛失すると、確定申告が進まない原因に。

退職時に確実にもらうことを強く推奨します。
会社は、原則として退職者に対して退職後1か月以内に交付の義務があるため、もしもらえていない場合は早めに連絡しましょう。

後になればなるほどトラブルのもとになるため退職時に確実にもらっておくことをお勧めします。


独立1年目の確定申告は、まず源泉徴収票を手元に置くことから始まります。


× ③ 「事業開始前に受け取った給与は確定申告に関係ない」

原則として、給与も事業所得も必ず合わせて申告する必要があります。

「事業開始前の給与は特に何もしなくていいでしょ?」「事業開始後の事業所得だけ申告すればいいんじゃないの?」

弊所のお客様にも最初はこんな勘違いをされていた方が結構な割合でいらっしゃいます。

原則として、開業前に働いていた期間は、同一年であればたとえ短期間でも申告対象です。

例外として、給与所得と事業所得合わせた「所得」が基礎控除の範囲内(2024年分までは48万円、2025年分以降は原則58万円・所得が一定以下の方は最大95万円)に収まっている場合は、所得税がかからないため確定申告が不要となるケースもあります。

ここでの注意点は「所得」ということです。収入と所得の違いがわからない方はこちらの記事を参考にしてみてください。

収入と所得の違いをわかりやすく解説

こんにちは、後藤会計事務所の後藤です。 このブログでは、日々のご相談で多いテーマや、個人事業主・会社経営者の方からよくいただく不安や疑問を、できるだけわかりやす…

また、確定申告が不要な人でも個人事業主であれば確定申告をするメリットがある場合もあり、そのあたりは個別具体的な判断が必要になるので一概に不要とは言えないところです。

いずれにしても、ここで大切なのは確定申告するなら給与分も事業と合わせて確定申告が必要になるということです。


× ④ 「会社からの給与が少なかったから給与分の確定申告はいらない」

事業の売上が発生していれば確定申告の必要あり。

一番多い勘違いかもしれません。

給与だけなら不要な場合でも+ 事業の売上があると話が変わります。

これは、上記の③にも似た話なのですが、給与所得はすごく少ない(基礎控除以下)だから確定申告は不要で事業所得だけを申告すればいいだろうと勘違いされている方がいるということです。

今までは給与所得1つだけだったので勘違いしやすいところなのですが、基礎控除を下回ったら所得税がかからないというのは、給与だけで判定するのではなくて、事業所得も合わせて判定します。

つまり、給与所得は30万円・事業所得は300万円の場合、給与所得だけで見れば基礎控除以下ですが、両方合わせれば基礎控除を超えてくるため合わせて確定申告が必要になります。


× ⑤ 「配偶者控除や生命保険控除は会社がやってくれているはず」

途中退職者は年末調整されないため、源泉徴収票には控除が反映されていません。

確定申告でまとめて控除を適用します。


【具体例・実務ポイント】

① 典型的なケース(最も多いパターン)

  • 4月末で会社を退職
  • 5月に開業届
  • 年内に事業収入が徐々に発生
    年末調整なし・確定申告で給与+事業を合算
    → 生命保険料控除・社会保険料控除も確定申告に入力

② 12月まで会社員+年末に開業したケース

  • 12月初旬まで会社員
  • 月末に退職
  • 12月中に開業届(事業開始は来年から)
    → 会社が年末調整してくれる可能性は高い
    → 開業後の収入は翌年の確定申告で申告

ただし 退職日と給与支給日 によって変わります。


③ 源泉徴収票の“ここを見ればOK”なポイント

年末調整未済(年調未済)の源泉徴収票の中で重要なのは次の3点です。

  1. 支払金額
  2. 源泉徴収税額
  3. 社会保険料等の金額

この3つを確定申告に反映させます。

④ 給与所得控除は国税庁 確定申告書等作成コーナーなら自動計算してくれる

年末調整未済(年調未済)の源泉徴収票をもとに給与所得の確定申告を行う場合、
「給与所得控除を自分でどう扱えばいいのか?」という質問をよくいただきます。

給与所得控除は、会社員にとっての“必要経費のようなもの”で、
これを反映しないまま申告してしまうと、本来より税金が高くなってしまいます。

結論としては次のとおりです。


●紙で申告書を作成する場合

自分で給与所得控除額を国税庁の表で確認し、
「給与所得=収入金額−給与所得控除」を計算して申告書に記載する必要があります。

※補足:給与所得控除そのものを申告書のどこかに「入力」するわけではありません。控除額を反映したあとの「給与所得の金額」を記載する形になります。


●国税庁 確定申告書等作成コーナーを使う場合

支払金額(収入)を入力すると、
システムが自動で給与所得控除を計算し、給与所得の金額を反映してくれます。

もし手書きする場合や、計算式が知りたい場合には国税庁のこちらのHPの表をもとに行うと便利です。

参考:No.1410 給与所得控除(国税庁HP)


⑤ 扶養控除・生命保険料控除・医療費控除・ふるさと納税・小規模企業共済

→ すべて確定申告でまとめて精算できます。
→ 独立初年度は経費+控除が重なるため、漏らしてしまうともったいないことに。


【補足】

独立1年目は、給与と事業収入が混在するため、
「年末調整があると思っていた」「確定申告だけでいいと思っていた」
という誤解が非常に多い時期です。

後藤会計事務所では、開業直後の方向けに

  • 開業届
  • 青色申告承認申請書
  • 必要経費の整理
  • 確定申告の全体設計
    を含めたサポートを提供しています。

【まとめ】

会社員から独立した人の年末調整で押さえるべきポイントは次の5つです。

  • 退職者は原則年末調整されない
  • 源泉徴収票は必ず退職時にもらう
  • 給与と事業所得は合算して確定申告
  • 各種控除は確定申告で適用

独立初年度は、申告内容が最も複雑になりやすい年です。

事業主の状況にはよりますが、独立初年度から税理士に依頼して、自身は事業に集中することが最善の場合も多いです。

迷ったら税理士に任せるという選択肢も考えてみてください。