飲食店を開業して成功しやすい人の特徴|利益・資金繰り・原価率を税理士が解説
こんにちは、後藤会計事務所の後藤です。
このブログでは、日々のご相談で多いテーマや、個人事業主・会社経営者の方からよくいただく不安や疑問を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。
飲食店は、料理や接客の魅力を直接お客様に届けられる、とてもやりがいのある仕事だと思います。
・自分のお店を持ちたい。
・夫婦や家族でお店を始めたい。
・地域に根づいて、長く続けられるお店を作りたい。
このような思いで、飲食店の開業を考える方もいらっしゃると思います。
一方で、飲食店は、開業すれば自然に続いていくという業種ではありません。
食材費、光熱費、人件費、家賃、借入返済、税金など、毎月出ていくお金が多く、売上があっても手元にお金が残りにくいケースがよく見られます。
実際、帝国データバンクの調査によると、2025年の飲食店の倒産は900件となり、過去最多を更新したとされています。食材費や光熱費の高騰、賃上げによる負担、値上げの難しさなどが背景として挙げられています。
参考:帝国データバンク「『飲食店』倒産動向調査(2025年)」
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260113-insyokuten2025/
また、東京商工リサーチの調査でも、2026年1月から5月までの飲食業の倒産は411件となり、同期間としては1997年以降で最多となったとされています。物価高倒産や人手不足倒産も増えていると報じられています。
参考:東京商工リサーチ「2026年1-5月『飲食業』倒産状況」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202931_1527.html
だからこそ、これから飲食店を開業する方や、開業して間もない方は、料理やお店づくりだけでなく、利益、資金繰り、原価率、人件費、税金についても、早い段階で考えておくことが大切です。
もちろん、最初から完璧な事業計画や会計の知識が必要というわけではありません。
ただ、長く続けやすい飲食店は、感覚だけで経営しているのではなく、売上や経費、お金の残り方を少しずつ確認しながら、無理のない形でお店を続けていることが多いと感じます。
この記事では、飲食店を開業して成功しやすい人の特徴について、利益、資金繰り、原価率、税金の観点から、税理士の立場で整理していきます。
目次
飲食店は、売上があってもお金が残りにくい業種です
飲食店に限らずですが、売上がそのまま利益になるわけではありません。
ただ、特に飲食店は、売上で得たお金の中から、食材費、飲み物の仕入れ、家賃、人件費、水道光熱費、消耗品費、広告費、決済手数料、借入返済、税金などに回しながら営業していく、資金回転の早い業種です。
そのため、売上だけを見ると順調に見えても、実際には手元にお金があまり残っていないことがあります。
特に開業直後は、内装費や設備費、備品購入、開業準備費用などでお金が出ていきやすい時期です。
そのうえ、売上が安定するまでには時間がかかることもあります。
開業前に考えていた売上計画どおりに、最初からお客様が来てくれるとも限りません。
売上がなければ日々の支払いにも、広告費などの投資にも回せないため売上が非常に重要なことは言うまでもありません。
ただ、飲食店はほかの業種に比べて「実際にどのくらい上手くいっているのか?」といったことを把握しにくい傾向にあります。
例えばですが、ITのエンジニアやプログラマーで独立した人は経費の種類が少なくボリュームも小さいため、売上金額の多くがそのまま利益になる傾向が多いです。
一方で、飲食店の場合には先ほど挙げたような数多くの経費が発生することや、立地や戦略によってそのボリュームもかなり異なってくることから、なかなか数字に強い方でないと実態の把握を直感的にするのが難しいのが現状です。
そのため、売上を増やすことだけではなく、どのくらい利益が残るのか、資金繰りが回るのか、固定費(毎月必ず出ていくお金)が重すぎないかを確認することが大切です。
成功しやすい人の特徴① 固定費を抑えて始める
飲食店で長く続けやすい方は、最初から大きく始めすぎず、固定費を抑えていることが多いです。
特に大きいのは家賃です。次に人件費です。
飲食店は、売上が多い月もあれば、思うように伸びない月もあります。
それでも、家賃や人件費は毎月発生します。
売上が不安定な時期に固定費が重いと、少し売上が落ちただけで資金繰りが苦しくなります。
そのため、開業時には、家賃を無理のない水準に抑えることがとても大切です。
また、最初から人を多く雇いすぎないことも大切です。
もちろん、お店の規模や営業時間によってはスタッフが必要です。
ただし、売上がまだ安定していない段階で人件費が大きくなると、毎月の負担が重くなります。
飲食店を小さく、手堅く、着実に強くしていきたい場合には、最初から大きく始めすぎないことが大切です。
固定費をかけて回収する飲食店と、小さく手堅く続ける飲食店があります
飲食店には、固定費を軽くして小さく長く続ける形もあれば、好立地に出店して高い売上で固定費を回収する戦略で出店する形もあります。
たとえば、駅前や商業施設にある大手カフェチェーンなどは、家賃や人件費、内装費などの固定費は重くなりやすい一方で、ブランド力、集客力、客単価、回転数、商品開発力、店舗運営の標準化によって、その固定費を回収していく形です。
また、過去に流行したタピオカ店や唐揚げ専門店のように、流行業態に乗って短期間で投資回収を狙う方法もあります。小さな店舗、テイクアウト中心、単純化されたオペレーションで、高回転を狙う形です。
ただし、このような方法は、流行の見極めや撤退判断も重要になります。長く続けるお店づくりとは、少し考え方が異なります。マーケティング力も非常に重要になります。
夫婦や家族で長く続けたい方、地域に根づいてお店を育てたい方の場合には、最初から大きな固定費を背負うよりも、小さく、手堅く、着実に強くしていく形が合っていることが多いと思います。
もちろん、前者の固定費をかけるやり方が悪いというわけではなく、戦略的に行うのであれば大きな成功を目指せる商売だと思っています。
ただ、今回の記事では後者の小さく、手堅く・・といったお店を目指す方を対象に書いているので、そういったものを目指しているはずが、知らず知らず前者の方法のように固定費をかけてしまったりすると危ないですということです。
居抜き物件や既存設備を活用することも大切です
開業時には、内装や設備にこだわりたくなると思います。気持ちはよくわかります。
お店の雰囲気は大切ですし、自分の理想のお店を作りたいという気持ちも自然なことです。
ただし、内装費や設備投資にお金をかけすぎると、開業前から資金が大きく減ってしまいます。
また、借入をして開業する場合には、開業後に返済が始まります。
開業してすぐに売上が安定すればよいですが、計画どおりにいかなかった場合、借入返済が大きな負担になることがあります。
そのため、居抜き物件を活用したり、既存の設備を生かしたりして、内装や設備にお金をかけすぎないこともとても大切です。
もちろん、最初から大きく投資して、一気に回収を狙うやり方で成功している方もいます。
ただし、その方法はリスクも大きくなります。
家族や夫婦で長く飲食店を続けたい、地域に根づいて着実にお店を育てていきたいという場合には、まずは小さく、手堅く、着実に強くしていく考え方が合っていると感じます。
危ない始め方は、売上が立つ前に固定費と借入が重くなっているケースです
一方で、開業時点で少し危ないと感じるのは、最初から家賃が高い、内装費が大きい、人を雇いすぎているケースです。
飲食店は、開業直後から売上が安定するとは限りません。
それにもかかわらず、毎月の家賃、人件費、借入返済が大きいと、少し売上が下がっただけで資金繰りが苦しくなります。
また、原価率や利益率をあまり意識せず、「自分が作りたいもの」「理想のお店づくり」だけを優先してしまうと、事業というより趣味に近い形になってしまうことがあります。
飲食店は、料理や雰囲気へのこだわりも大切です。
ただ、それを長く続けるためには、利益が残る形になっているかを確認することも大切です。
お客様に喜んでもらうことと、お店を続けられるだけの利益を残すことは、どちらも大切です。
成功しやすい人の特徴② 数字を見ようとしている
売上計画もなんとなくではなく数字で考える
成功しやすい人の特徴として、数字をみている(見ようとしている)というものがあります。
例えば、出店の際の売上計画も、「なんとなくいけそうな気がする」だけではなく、数字に基づいた売上計画にすることが必要です。
また、売上計画は「予想」だけではなく、改善のために使うため非常に重要です。
飲食店の売上を考えるときは、まずは次のように分解すると整理しやすいです。
席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数
ランチ営業と夜営業がある場合には、それぞれ分けて考えた方が現実に近くなります。
立地によっては、平日と土日祝日で分けて考えることもあります。
ただし、開業前に作った売上計画どおりに進むとは限りません。
実際には、一定期間営業してみて、数字を確認し、改善し、また新しい施策を試していくことになります。
たとえば、客単価が想定より低いのか、客数が足りないのか、ランチは良いが夜が弱いのか、平日は良いが休日が弱いのか。
数字を見ていくことで、改善すべき点が見えやすくなります。
だからこそ、最初から大きな投資をしすぎないことが大切です。
売上計画は大切ですが、計画どおりにいかない前提で、余裕を持って始める必要があります。
原価率と利益を見ている
飲食店では、原価率の管理がとても重要です。
原価率とは、売上に対して食材や飲料などの仕入れがどれくらいかかっているかを示す割合です。
たとえば、売上が100万円で、食材や飲料の仕入れが35万円であれば、原価率は35%です。
飲食店では、売上が増えていても、原価率が高すぎると利益が残りません。
特に、こだわった食材を使うお店、ボリュームを重視するお店、価格を抑えて提供するお店では、知らないうちに原価率が高くなっていることがあります。
成功しやすい人は、「なんとなく利益が出ているはず」ではなく、毎月の売上と仕入れを確認し、原価率を数字で見ています。
また、売上が増えても、利益が増えるとは限りません。
売上を増やすために人を増やす、営業時間を長くする、広告を出す、食材の仕入れを増やすなどを行うと、その分だけ費用も増えます。
忙しくなったのに、手元に残るお金はあまり増えていないということもあります。
そのため、飲食店では「売上を増やすこと」と「利益を残すこと」を分けて考える必要があります。
成功しやすい人の特徴③ 開業資金を使い切らず運転資金を残す
飲食店の開業で特に大切なのは、開業資金をすべて使い切らないことです。
開業前は、どうしても内装や設備、備品、広告などに目が向きやすくなります。
しかし、開業後すぐに売上が安定するとは限りません。
オープン直後は売上が良くても、その後に落ち着くこともあります。
逆に、最初は認知されるまで時間がかかり、数か月後から少しずつ売上が伸びることもあります。
その間も、家賃、人件費、仕入れ、水道光熱費、借入返済などは発生します。
そのため、開業時点で数か月分の運転資金を残しておくことが重要です。
開業資金を使い切ってしまうと、少し計画がずれただけで資金繰りが苦しくなります。
成功しやすい人は、開業前から「開業するためのお金」と「開業後にお店を続けるためのお金」を分けて考えています。
飲食店は、開業できるかどうかだけでなく、開業後に続けられるかどうかが大切です。
成功しやすい人の特徴④ レジ・現金・キャッシュレス入金を管理している
飲食店では、レジ管理も重要です。
現金売上、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済、デリバリー売上など、入金経路が複数になることが多いためです。
特にキャッシュレス決済は、売上が発生した日と実際に入金される日がずれます。
売上は上がっているのに、通帳への入金は後日になるため、資金繰りを感覚で把握しにくくなります。
また、現金売上がある場合には、レジ残高と実際の現金が合っているかを確認することも大切です。
毎日の売上を正しく記録し、現金とキャッシュレス入金を区分して管理できるお店は、経営状況を把握しやすくなります。
反対に、売上や入金の管理が曖昧になると、利益が出ているのか、資金繰りが悪化しているのかが見えにくくなります。
飲食店では、料理や接客だけでなく、日々のお金の流れを整えることも経営の一部です。
飲食店で最初に整えておきたい経理の基本
飲食店を開業する場合、最初から完璧な経理体制を作る必要はありません。
ただし、最低限、次のような記録は残るようにしておくことが大切です。
・レジの売上記録
・キャッシュレス決済の明細
・仕入れや材料費の領収書
・現金で支払った経費の記録
・アルバイトの賃金台帳
・事業専用口座の入出金記録
特に、飲食店ではレジの売上記録が重要です。
現金売上、クレジットカード売上、QRコード決済、予約サイトやデリバリーサービス経由の売上など、売上の経路が複数になることがあります。
そのため、売上がどこで発生し、いつ入金されるのかを確認できるようにしておく必要があります。
また、アルバイトを雇う場合には、給与の支払い記録や賃金台帳も必要になります。
現金で経費を支払った場合には、領収書だけでなく、何のために支払ったのかが後からわかるようにしておくと安心です。
そして、飲食店を始める場合には、事業専用口座を作ることをおすすめします。
プライベートの入出金と事業の入出金が混ざってしまうと、売上、仕入れ、経費、生活費の区別がわかりにくくなります。
開業時点で事業専用口座を作っておくと、後から経理を整理しやすくなります。
飲食店は、できるだけ早く税理士に相談した方がよい業種です
飲食店の場合、税理士への相談はできるだけ早い方がよいと思います。
できれば開業前、遅くとも開業してすぐの段階で、一度相談しておくと安心です。
飲食店は、他の業種と比べても、税務や経理の論点が多くなりやすい業種です。
たとえば、現金売上、クレジットカード売上、キャッシュレス決済、仕入れ、在庫、アルバイトの給与、源泉所得税、年末調整、消費税、インボイス制度など、開業後に考えることが多くあります。
また、飲食店の事業主の方は、仕込み、営業、接客、仕入れ、清掃、スタッフ対応などで、日々とても忙しくなります。
開業してから経理や税務を一から整えようとしても、なかなか手が回らないことがあります。
そのため、飲食店については、売上が大きくなってからではなく、できるだけ早い段階で税理士に相談することをおすすめします。
後藤会計事務所で相談できること
後藤会計事務所では、飲食店を開業する個人事業主の方や、開業後に経理・税務・資金繰りを整理したい方のご相談にも対応しています。
顧問契約の場合には、たとえば次のような内容について対応できます。
・開業前、開業直後の税務相談
・記帳代行
・所得税の確定申告
・消費税申告
・インボイス登録や消費税の計算方法の相談
・給与、源泉所得税、年末調整に関する相談
・日々の資金繰りに関する相談
・法人成りの相談
飲食店は、現金売上、キャッシュレス決済、仕入れ、在庫、アルバイトの給与、消費税、インボイス制度など、開業直後から考えることが多い業種です。
そのため、開業してから慌てて整理するよりも、できるだけ早い段階で税理士に相談しておくと安心です。
なお、融資申請書の作成サポートや融資に関するサポートについては、内容に応じて別料金となります。
また、後藤会計事務所では訪問対応は行っていませんが、Web面談やメール等でやり取りしながら、状況を確認して進めることができます。
レジ、キャッシュレス決済、会計ソフトなどを使いながら、数字を整理していきたい方にも対応しています。
まとめ:飲食店には夢があります。だからこそ、現実の数字も大切です
飲食店には夢があります。
自分のお店を持ち、お客様に料理や空間を届けることは、とてもやりがいのある仕事だと思います。
一方で、飲食店は夢だけで長く続けられる業種ではありません。
家賃、人件費、食材費、光熱費、借入返済、税金など、現実的に見ておくべき数字も多くあります。
長く続けやすい飲食店は、料理や接客の魅力に加えて、売上、利益、資金繰り、固定費、原価率といった数字も確認しています。
小さく、手堅く、着実に強く。
真面目にお店を続けたい方ほど、早い段階で数字を整理し、必要に応じて税理士に相談してほしいと思います。
後藤会計事務所では、飲食店を小さく、手堅く、着実に強くしていきたい方と一緒に、無理のない形を考えていきます。
経理や税務に不安がある方、開業後の数字を整理したい方、資金繰りや消費税について早めに確認しておきたい方は、お気軽にご相談ください。
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