建設業・一人親方が売上1,000万円前後になったら注意したいこと|消費税・外注費・法人成りを税理士が解説

こんにちは、後藤会計事務所の後藤です。
このブログでは、日々のご相談で多いテーマや、個人事業主・会社経営者の方からよくいただく不安や疑問を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

建設業の一人親方として真面目に仕事を続けていると、少しずつ受注が増え、売上が1,000万円前後まで伸びてくることがあります。

これは、もちろんん素晴らしいことです。

浮き沈みの激しい業界の中で生き残っている建設業の一人親方の方は、現場で経験を積みながら実務の中で鍛えられており、コツコツと信頼を積み上げている方が多いと感じます。

一方で、現場が忙しくなるほど、経理や税務は後回しになりがちです。

「仕事は増えているのに、なぜかお金が残らない」
「元請けから言われてインボイス登録をしたが、消費税申告の方法がわからない」
「工具や車両を購入したが、いつどこまでを経費にできるかわからない」
「外注先へ現金で支払っているが、どのような資料を残せばよいかわからない」
「利益が増えて法人成りを考えた方がよいのか迷っている」

このようなご相談をされることがあります。

この点、売上が1,000万円前後になったからといって、必ず同じ対応になるわけではありません。

ただ、税金、消費税、資金繰り、外注費、今後の働き方について、一度整理しておくとよい時期ではあります。

この記事では、建設業の一人親方が売上1,000万円前後になったときに注意したいポイントを解説します。

売上が増えても、手元に残るお金が自動的に増えるとは限りません

売上が増えることは、事業が順調に成長している証拠です。

ただし、入金された金額が、そのまま自由に使えるお金になるわけではありません。

売上が増えると、一般的には、所得税、住民税、国民健康保険料などの負担も増えていきます。

インボイス登録をしている場合には、消費税の納税も考える必要があります。

さらに、仕事が増えると、

  • 外注先への支払い
  • 交際費
  • 材料費
  • 車両費
  • ガソリン代
  • 工具代
  • 駐車場代
  • 高速道路代

などの支出も増えやすくなります。

売上が伸びているのに、手元資金が不足することもあります。

大切なのは、売上だけを見るのではなく、

・実際にいくら利益が出ているのか
・税金を支払うためのお金を残せているのか
・元請けから入金されるまでの期間を耐えられるのか

といったところまで確認することです。

インボイス登録をしている場合は、売上1,000万円以下でも消費税申告が必要になります

一般的には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合、消費税の納税義務は免除されます。

しかし、建設業の一人親方の場合、元請けから求められてインボイス登録をしている方も少なくありません。

インボイス発行事業者として登録すると、売上が1,000万円以下であっても、原則として消費税の申告と納税が必要になります。

「元請けから登録してほしいと言われたので、とりあえず登録した」
「登録番号は取得したが、その後に消費税申告が必要だと知らなかった」

というケースもあります。

インボイス登録をした場合は、登録して終わりではありません。

申告方法や納税額についても、早めに確認しておくことが大切です。

消費税の計算方法は、人によって有利不利が異なります

消費税の計算方法には、主に次のようなものがあります。

  • 原則課税
  • 簡易課税
  • 2割特例などの経過措置

どの方法が有利になるかは、売上、経費、設備投資、届出の状況、インボイス登録の時期などによって変わります。

たとえば、経費や設備投資が多い場合は、原則課税が有利になることがあります。

一方で、経費がそれほど多くない場合には、簡易課税や経過措置が有利になることもあります。

ただし、簡易課税を選択する場合には、原則として事前の届出が必要です。

また、2割特例などの経過措置は、誰でも使える制度ではなく、適用できる期間や要件も決まっています。

インボイス登録をしたからといって、毎年自動的に最も有利な方法で計算されるわけではありません。

売上が増えてきた段階で、早めに確認しておくことをおすすめします。

売上がさらに伸びると、消費税の経理も複雑になります

建設業では、仕事が軌道に乗ると、売上が一気に大きく伸びることがあります。

一人親方として始めた方が、外注先を増やした結果、売上5,000万円を超えるケースもあります。

この段階になると、消費税の経理にもより注意が必要です。

簡易課税制度は、原則として、基準期間である前々年の課税売上高が5,000万円以下の場合に選択できる制度です。

基準期間の課税売上高が5,000万円を超えると、その課税期間では簡易課税制度を適用できません。

原則課税で申告する場合には、売上に係る消費税額から、仕入れや経費に係る消費税額を差し引いて納税額を計算します。

そのため、領収書や請求書について、

  • 事業に関係する支出か
  • 消費税の対象となる支出か
  • 適用される税率は何%か
  • インボイスの要件を満たしているか
  • 仕入税額控除の対象となるか

を確認しながら記帳する必要があります。

建設業では、工具、建材、消耗品、駐車場代、ガソリン代、外注費など、日々の取引が多くなりやすいです。

取引量が増えるほど、ご自身ですべてを整理する負担も大きくなります。

売上が伸びてきた段階では、経理に時間を使い続けるよりも、税理士へ依頼し、現場や営業に集中した方が合理的なケースも多いです。

納税資金は、専用口座に取り分けておくと安心です

一人親方の方は、事業用口座を持っていることは多いと思います。売上の入金や外注の支払いなど事業にかかる入出金を管理する口座ですね。

ただ可能であれば、事業用口座とは別に、納税資金を取り分けるための専用口座も別で用意しておくこともおすすめです。

売上が入金されると、どうしても使えるお金が増えたように感じてしまいます。

しかし、その中には、後から支払う所得税、住民税、消費税など税金や社会保険の支払いの資金も含まれています。

納税時期になって慌てないために、一定額を納税用口座へ移しておく方法があります。

正確な金額がわからない場合でも、まずは概算で取り分けておくと、資金繰りが安定しやすくなります。

3か月ごとに帳簿を確認すれば、売上や利益の推移を見ながら、納税資金をどの程度確保すればよいかも考えやすくなります。

通帳への入金額だけを足しても、正しい売上になるとは限りません

一人親方の方がご自身で申告する場合、通帳への入金額を合計し、そのまま売上としているケースがあります。

しかし、通帳への入金額と、申告すべき売上高が一致するとは限りません。

たとえば、建設業では、

  • 月末締めの翌月払いや翌々月払い
  • 年末に請求し、翌年に入金される
  • 振込手数料が差し引かれて入金される
  • 材料費などの精算が混ざる
  • 一部の業務では源泉徴収された後の金額が入金される

といったケースがあります。

売上を正しく把握するためには、通帳だけではなく、請求書や入金明細も確認することが大切です。

特に年末前後の売上については、入金された時期だけで判断せず、請求内容も確認した方が安心です。

車両費や工具代は、定期的に整理した方がよいです

建設業では、仕事に必要な車両、工具、備品などが多くなりやすいです。

たとえば、

  • 車両
  • ガソリン代
  • 車検費用
  • 自動車保険料
  • 修理費
  • 高速道路代
  • 駐車場代
  • 工具代
  • 安全靴
  • ヘルメット
  • 作業着
  • 材料費
  • 携帯電話代

などがあります。

事業に必要な支出であれば、基本的に経費計上が可能です。

ただし、購入した金額や内容によっては、購入した年に全額を経費にするのではなく、固定資産として計上し、複数年にわたって減価償却する必要があります。

また、すでに処分した車両や工具が、固定資産台帳に残ったままになっている場合もあります。

固定資産台帳が長くなり、実際に保有している資産と一致しなくなると、帳簿もわかりにくくなります。

売上が伸びてきた段階で、一度整理しておくと安心です。

自宅兼事務所や車両の私用分には注意が必要です

一人親方の場合、自宅の一部を事務所として使っていることもあります。

また、車両を仕事だけでなく、プライベートでも使う場合があります。

仕事専用の車両であることが明確であれば、比較的整理しやすいです。

一方で、家族も利用する車両や、私用でも使う車両の場合には、事業で使用した割合を考える必要があります。

自宅兼事務所についても、家賃や光熱費をすべて経費にできるわけではありません。

事業に使っている範囲や利用状況に応じて、合理的に整理することが大切です。

青色申告65万円控除は、会計ソフトに入力すれば自動的に使えるわけではありません

青色申告特別控除は、個人事業主にとって大きなメリットがあります。

要件を満たせば、最高65万円の控除を受けられます。

ただし、会計ソフトへ入力し、e-Taxで申告すれば、自動的に65万円控除を受けられるわけではありません。

複式簿記として正しく記帳し、貸借対照表や損益計算書を作成する必要があります。

実際に帳簿を確認すると、

  • 現金残高がマイナスになっている
  • 反対に、現金残高が数百万円まで膨らんでいる
  • 売掛金を計上していない
  • 固定資産台帳が整理されていない
  • 複式簿記のように見えて、実質的には単式簿記に近い

というケースもあります。

会計ソフトを使っているからといって、必ずしも帳簿の中身が整っているとは限りません。

売上が増えてきた段階で、一度帳簿の作り方を確認しておくと安心です。

外注先への支払いは、現金で渡して終わりにしない

仕事が増えてくると、他の職人へ応援をお願いすることもあります。

外注費の支払いも口座振込など記録の残る形で支払うことをおすすめしますが、いまだに現金での手渡しが慣習として多いのも現状です。

現金での支払いの場合は特に、外注先への支払いは、渡して終わりにしないことが大切です。

できるだけ、次のような記録を残してください。

  • 外注先の氏名または屋号
  • 日付
  • 金額
  • 作業内容
  • 現場名
  • 請求書
  • 現金払いの場合は領収書や支払記録

外注費は金額が大きくなりやすいため、仮に税務調査が行われた場合注目されやすいところでもあります。そのため、後から内容を説明できるようにしておくことが重要です。

また、外注先を増やしながら積極的に事業を拡大していく場合には、個人事業主のままでよいか、法人化を検討した方がよいかも考える必要があります。

飲食代は、誰と何のために使ったのかを残しておく

建設業では、元請け、外注先、現場関係者、仕事仲間との飲食が発生することもあります。

飲食をしながら仕事の話をする文化が残っている業界でもあり、ほかの業種と比べて飲食代が多くなりがちですね。

事業に関係する飲食代であれば、基本的には経費計上可能です。

ただし、飲食代がすべて経費になるわけではありません。

誰と、どのような目的で利用したのかを説明できるようにしておくことが大切です。

領収書やレシートに、相手方や利用目的をメモしておくと、後から確認しやすくなります。

建設業では、紙の資料が多くなりやすい

建設業の一人親方の方は、ほかの業種と比べて、紙の資料が多くなりやすい傾向があります。

たとえば、

  • 紙で受け取った請求書
  • 紙で発行した請求書の控え
  • プロショップやホームセンターで購入した工具・建材・消耗品のレシート
  • コインパーキングの領収書
  • 高速道路やガソリン代の領収書
  • 現金で支払った外注費の記録

などです。

パソコン操作があまり得意ではなく、ほぼすべてを紙での管理を続けている方もいらっしゃいます。

紙で管理すること自体が悪いわけではありません。

ただし、領収書や請求書が増えるほど、確定申告の時期に1年分の資料をまとめて整理する負担は大きくなります。

実際に、

「資料を床に広げたものの、どれが何の支払いなのかわからなくなった」
「領収書を見るだけで気が重くなり、申告の準備を後回しにしてしまった」
「現場へ出た方が売上につながるので、経理へ時間を使いたくない」

というお話を伺うこともあります。

領収書がきれいに整理できていなくても、ご相談いただけます。

一方で、1年分を確定申告の直前にまとめて確認するよりも、3か月ごとなど、一定の間隔で資料を確認した方が負担は軽くなります。

資料が溜まってしまい、どこから手を付ければよいかわからない方は、次の記事もご覧ください。

利益が出ていても、資金繰りが苦しくなることがあります

帳簿上は黒字でも、手元にお金が残っていないことがあります。

建設業では、

  • 元請けからの入金サイトが長い
  • 材料費を先に支払う
  • 外注費を先に支払う
  • 車両や工具を購入する
  • 売上の増加に伴い、思ったよりも税金や消費税の負担が増える
  • 生活費も同じ口座から支払う

ということが重なる場合があります。

仕事を増やすほど、先に必要となる支払いも増えます。

そのため、利益が出ているかだけではなく、実際に使えるお金がどの程度残っているのかも確認する必要があります。

売上が伸びてきた段階では、節税だけではなく、資金繰りも含めて考えることが大切です。

法人成りは、節税だけで決めるものではありません

売上が1,000万円を超えたからといって、必ず法人化した方がよいわけではありません。

一時的に売上が増えただけで、今後の受注が安定しない場合もあります。

法人化すると、社会保険料や法人の維持費、事務負担なども増えます。

また法人は作るときもですが、解散・清算するときにも手続きや費用がかかり大変な場合が多いです。

一方で、

  • 今後も継続して売上が伸びそう
  • 外注先や従業員を増やしたい
  • 元請けとの関係で法人化した方がよい
  • より大きな仕事を受注したい
  • 事業を長期的に続けたい

という場合には、法人化を検討する意味があります。

法人成りは、単純な節税計算だけで決めるものではありません。

売上や所得だけではなく、

  • 元請けとの関係
  • 今後の働き方
  • 事業を拡大したいか
  • 年齢
  • 家族の状況
  • 社会保険料の負担
  • どの程度の期間、事業を続けたいか

まで含めて考えることが大切です。

確定申告の直前まで待たず、早めに相談してください

建設業の一人親方の方は、数字や経理が苦手だからと、税理士への相談を遠慮されることがあります。

現場が忙しく、日中に時間が取れない方も少なくありません。

しかし、資料が完全に整理されていなくても、最初からすべてを理解していなくても大丈夫です。

確定申告の直前になってから相談すると、

  • 消費税の申告方法を十分に検討できない
  • 簡易課税などの届出が間に合わない
  • 納税資金を準備する時間がない
  • 帳簿の問題点を直す時間がない
  • 繁忙期で税理士が対応できない

ということもあります。

特に、12月、1月、2月に現場が忙しくなる方は、早めに準備しておくと安心です。

まとめ:売上が伸びてきたら、税務と資金繰りも一度整理しましょう

建設業の一人親方の方は、現場で真面目に仕事を続けているうちに、売上が伸びていくことも少なくありません。

一方で、忙しくなるほど、経理や税務は後回しになりやすくなります。

売上が1,000万円前後になったら、

  • 消費税
  • インボイス制度
  • 外注費
  • 車両や工具
  • 青色申告65万円控除
  • 納税資金
  • 資金繰り
  • 法人成り

について、一度整理しておくことをおすすめします。

売上が増えているからこそ、経理や税務に使う時間を減らし、現場や営業に集中した方がよい場合もあります。

後藤会計事務所では、建設業の一人親方や個人事業主の方について、記帳代行、所得税の確定申告、消費税申告、インボイス対応、法人成りの相談まで対応しています。
領収書や請求書が紙で残っている場合や、経理を丸投げしたい場合でも、状況を確認しながら無理のない方法をご提案します。

数字や経理が苦手な場合でも、遠慮なくご相談ください。

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